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御召列車の運行

御召列車の夜行運転

 御召列車は夜行で運転されないのが慣例となっているようだ。現代よりも列車のスピードが出なかった頃の行幸は、各地の御用邸や名家に泊まりながらの行幸だった。

 ただ、終戦直後のいわゆる昭和天皇の「全国地方巡幸」で、唯一御召列車が夜行として運行された。

 1947年(昭和22年)11月26日、昭和天皇は17日間にも及ぶ山陰地方、山陽地方を横断する巡幸に出かけた。

11月26日 東京→京都(京都御所泊)
11月27日 京都→福知山→豊岡→鳥取→上井(三朝みささ温泉泊)
11月28日 三朝→倉吉→米子(坂口邸泊)
11月29日 米子→境港→米子→安来→揖屋→松江(玉造温泉泊)
11月30日 松江→出雲大社参拝→出雲今市→大田→江津→浜田(旅館泊)
12月1日 浜田→萩(毛利別邸泊)
12月2日 (午前静養)萩→長門→下関(下関停泊の興安丸泊)
12月3日 下関→長府→小野田→宇部→小郡→防府(毛利本邸泊)
12月4日 防府→山口→防府(毛利本邸泊)
12月5日 防府→徳山→柳井→岩国→宮島口→宮島(旅館泊)
12月6日 静養
12月7日 宮島→宮島口→広島(原爆投下後初)→呉→三原(会社の施設泊)
12月8日 三原→尾道→福山→倉敷(有隣荘泊)
12月9日 倉敷→玉野→岡山(知事公舎泊)
12月10日 岡山→和気→倉敷(有隣荘泊)

 12月11日、倉敷の有隣荘を出発した巡幸の列は津山に入り、17日間にも及ぶ巡幸の最後の訪問地柵原やなはら鉱山(硫化鉄鉱を採掘)に入った。

 柵原鉱山から、姫新線林野はやしの駅に向かい、15時42分に御召列車が発車した。この御召列車は、途中で運転停車したものの、翌朝6時58分に東京駅に到着。昭和天皇はそのまま皇居に戻った。御召列車が夜行列車のように運行されたのはこの1回限りである。どうしてこのような旅程が組まれたかは、詳らかではない。

 なお、この1年前の1946年(昭和21年)6月、昭和天皇が千葉県内を1泊2日の予定で行幸することになった。銚子で宿泊することになったが、醤油会社社長の邸宅に宿泊しようとしたら、戦災で焼失していたため、御在所に適したところがなく、新生あらおい駅に停車する御料車に宿泊することがあった。

 いずれも終戦直後の復興初期のできごとで、「異例中の異例」のできごとだったのだろう。

御召列車の運行(1)

 御召列車は、およそ半年ほど前から運行計画が練られるという。

 全国植樹祭(5月〜6月)、国民体育大会秋季大会(国体、9月〜10月)、全国豊かな海づくり大会(9月〜11月)への出席と、地方事情の視察を兼ねて行幸啓の計画が関係する地方自治体と宮内庁の間で練られる。また、外国王室からの国賓訪日の日程については、外務省や宮内庁などの間で計画が練られる。

 具体的な日程が決定し、御召列車を運行する必要がある日程となると、宮内庁などから関係する鉄道事業者に御召列車の運行が依頼される。

 これを受けて、JRでは御召列車のダイヤ作成や御料車の整備が進められる。御召列車に御料車を用いず、一般のグリーン車を用いる場合でも必要に応じた整備が進められる。

 これとほぼ並行して、警察当局の警備計画が立案され、御召列車の運行に関する警備も調整が進められる。

御召列車の三原則

 御召列車のダイヤ作成にあたり、次のような3つの原則がある。

  1. 他の列車と並んで走ってはならない
  2. 他の列車に追い抜かれてはならない
  3. 立体交叉部分において、他の列車が上の線路を走ってはならない

 在来線で運行される御召列車は、特急列車並みのスピードで運行されるのが慣例で、他の列車と並んで走ることは大都市圏の複々線区間以外には難しい。このため、昭和時代までは一般の営業列車がダイヤ変更されることもしばしばあった。

御召列車の運行(2)

 御召列車の運行ダイヤが決まるのと前後して、皇室の公式行事である行幸啓が官報で公示される。なお、御用邸での静養に向かう場合は、私的なお出かけであるため、官報には公示されない。

 一方、御召列車を運行する鉄道事業者でも着々と準備が進められる。御召列車に供される車輌の整備だけでなく、御召列車の運転士を選任する。御召列車は、発車時、停車時に揺れないことが求められる。それは、天皇皇后両陛下は、車内で立ったままお見送りに応えるからだ。さらに、停車位置が大幅にずれてしまうことも許されない。数センチ単位での停車位置のコントロールが求められる。蒸気機関車が牽引した時代は、揺れないように発車させたり、ずれないように停車させたりするには相当熟練した技能が求められ、運転を担当する機関区で、選び抜かれた機関士が運転を担当する。

 さらに、御召列車に不測の事態が生じ運行ができなくなった場合に備え、予備列車の準備も進められる。御料車(客車)は1輌しかないので予備を用意することはないが、牽引する機関車、電車であれば編成単位で予備を用意する。この予備車輌・編成は、いわゆる「露払い列車」として御召列車に先行するか、御召列車に続行する形で運行されることになる。

御召列車の運行(3)

 御召列車の運行当日、いよいよ御召列車の運行となる。まずは、「露払い列車」(指導列車)が運行されることが多い。露払い列車とは御召列車に先んじて運行される列車で、この列車の運行以降、御召列車が走行する線路のポイントや信号などを一切固定することもある。

 このような「露払い列車」がいつから運行されたのは、はっきりとわからないが、明治時代に九州での陸軍大演習を視察する明治天皇の御召列車の運行当日に、山口県の鉄橋に爆弾を仕掛けるという秘報が警察から国鉄当局に入った。これに対し、御召列車に約20分先行して機関車を走らせることで、不測の事態を回避することとした。爆弾は仕掛けられておらず、先行する列車も無事に鉄橋を通過し、それに続いた御召列車も無事に通過した。これが、記録の残る露払い列車の始まりといえる。

 多くの御召列車は、東京側の出発駅を原宿駅にある専用の通称「宮廷ホーム」としていた。このホームは、正式には「原宿駅側部乗降場」といい、1926年(大正15年)8月に建設されたものである。これは、病弱の大正天皇が御用邸で静養する際、御召列車を出発させるために建設されたもので、昭和時代(戦後)には混雑する東京駅を避けて御召列車を運行させる意味合いもあった。この「宮廷ホーム」の敷地は財務省とJR東日本が共同で所有している。

 御召列車は、列車番号が付されず、「お召し」あるいは「オメシ」とされる。ただ、最近ではコンピュータ制御による運行管理システムから「9001列車」「9002列車」と列車番号が付与されることもある。

 御召列車の運行にあたり、国鉄時代には「御召列車運転及び警備規程」なる規程が存在した。国鉄改革によってこの規程は失効したものと考えられるが、JR旅客各社でもこの規程を基本的に踏襲していると思われる。JR東日本・東海・西日本の本州3社は、JR法の適用から除外された「民間企業」であるため、規程の存在を外部から確認する術さえもない。

御召列車運転及び警護規程(昭和40年8月16日通達第15号)

第1章 総則

(適用範囲)
第1条 お召列車及び御乗車用列車の乗務職員、運転及び警護の取扱方については、運転保安管理規程によるほか、この規程の定めるところによる。
2 この規程に定めていない事項については、別に定めているものによる。

(3支社及び東海道新幹線支社等に関する適用)
第2条 この規程において、鉄道管理局又は鉄道管理局長に適用される規定は、3支社及び東海道新幹線支社並びにこれらの各支社長に関して適用するものとする。

(用語の意義)
第3条 この規程における用語の意義は、次の各号に掲げるとおりとする。
 (1) 「お召列車」とは、天皇陛下及び皇后陛下の御乗用として、特別に運転する臨時列車をいう。
 (2) 「お乗用列車」とは、天皇陛下、皇后陛下、皇太子殿下及び皇太子妃殿下の御乗用として、運転するお召列車以外の列車をいう。
 (3) 「お召列車編成車両」とは、車両称号基準規程(昭和39年7月工達第1号)第6条に規程する皇室用客車及びお召列車を編成する電車又は気動車をいう。
 (4) 「御乗用車」とは、天皇陛下、皇后陛下、皇太子殿下及び皇太子妃殿下の御乗用として、お召列車又は御乗用列車に連結する車両をいう。
 (5) 「通常列車」とは、輸送管理規程(昭和39年4月総裁達第176条)第5条に規程する列車のうち、臨時列車以外の列車をいう。
 (6) 「乗務職員」とは、お召列車及び御乗用列車に乗務する職員をいう。

(国旗の掲出)
第4条 お召列車の最前部となる車両の先頭には、国旗を交差して掲げるものとする。
2 国旗の形状及び寸法は、次の通りとする。
 (旗玉の直径は105mmとする。)

(御紋章の掲出)
第5条 お召列車を運転する場合の御乗用車には、御紋章を掲出するものとする。

(他の運輸機関等との協議)
第6条 鉄道管理局長は、この規程に定めてある諸施設に関係あるもので、地方鉄道、軌道その他の所管に属し、日本国有鉄道で管理しないものについては、当該施設物を所有する者と協議のうえ、その取扱いを定めなければならない。

(送迎者及び報道関係者の取扱い)
第7条 鉄道管理局長は、送迎者及び報道関係者を停車場の構内に入場させる場合には、次の各号に掲げる事項について、関係のある官公庁と協議のうえ定めなければならない。
 (1) 入場する者の数
 (2) 位置
 (3) 入場する時刻

(敬礼)
第8条 天皇陛下、皇后陛下、皇太子殿下及び皇太子妃殿下に対しては、最敬礼を行なうものとする。ただし、次の各号に掲げる職員は、この限りでない。
 (1) お召列車及び御乗用列車の運転及び警護に直接従事している職員(お召列車及び御乗用列車の発着する停車場の駅長を除く)
 (2) お召列車及び御乗用列車と行き違い、又はこれを待避する列車の乗務員

第2章 お召列車の取扱い

第1節 乗務職員

(お召列車の乗務職員及びその乗務位置)
第9条 お召列車の乗務職員(役員を含む)及びその乗務位置は、別表第1のとおりとする。

(補助機関車の乗務職員)
第10条 お召列車に補助機関車を連結する場合のその機関車の乗務員は、次の各号に掲げるとおりとする。
 (1) 機関区の助役(運転及び指導の業務を担当する者に限る。) 1人
 (2) 機関士又は電気機関士 2人
 (3) 機関助士又は電気機関助士 1人
 (4) 機関車検査掛 1人
2 総括制御により、本務機関車で操縦される補助機関車には、前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる職員を乗務させるものとする。
 (1) 機関士又は電気機関士 1人
 (2) 電気機関助士 1人(信越本線横川・軽井沢間のEF62形式機関車に限る。)
 (3) 電気機関車検査掛 1人

(乗務区間)
第11条 お召列車を運転する区間が、2以上の鉄道管理局にわたる場合の乗務員の乗務区間は、運転局長が指定する。

第2節 服装

(制帽及び制服の着用)
第12条 お召列車の乗務員は、服制および被服類取扱基準規程(昭和39年7月厚資達第2号)第3条に規定する制帽(職員)及び制服を着用するものとする。

(乗務き章のはい用)
第13条 お召列車の乗務職員は、お召列車乗務き章(以下「乗務き章」という。)を上衣の左胸部の見やすい箇所につけるものとする。この場合、効績章をつけているときに、その上部につけるものとする。
2 前項に規定するき章の様式は、次のとおりとする。

(乗務き章の取扱方)
第14条 支社長又は鉄道管理局長は、お召列車を運転するつど乗務き章の必要数をそれぞれ取りまとめ、その貸与を受けなければならない。この場合の貸与及び返納の取扱いは、次の各号に定めるとおりとする。
 (1) 貸与を受けるときは、使用申込書を支社長又は鉄道管理局長から運転局長に提出すること。
 (2) 使用を終わったときは、すみやかに運転局長に返納すること。
2 前項第1号に規定する使用申込書の様式は、別式第2のとおりとする。

(腕章の着用)
第15条 お召列車の発着する停車場において、乗降場の警備に従事する職員(駅長、助役、運転掛及び鉄道公安職員を除く)及びお召列車の荷物の積卸しその他のため乗降場に出場する職員は、左腕に腕章をつけなければならない。
2 鉄道管理局長は、前項に規定する腕章の制式について、あらかじめ定めておくものとする。

第3節 列車の運転

(お召列車の優先取扱い)
第16条 運転整理を行なう場合、お召列車については他の列車に優先して取り扱うものとする。

(トロリーの使用制限)
第17条 駅長は、お召列車の運転に関係のある線路において、お召列車の通過する前3時間内は、トロリーを使用させてはならない。ただし、次の各号の1に該当する場合を除く。
 (1) 線路等の応急処置の必要が生じたとき
 (2) お召列車の通過する1時間以上前において、特別巡検のための軌道自動自転車を2人以上で使用するとき

(お召列車停止位置の指示)
第18条 駅長は、お召列車の停止する停車場においては、次の各号に定めるところにより、その停止位置を指示しておかなければならない。
 (1) 客車列車
  ア 前部機関車の前部端りようの位置の機関士又は電気機関士から見やすい側に、停止手信号を現示すること。
  イ 前部機関車の機関士又は電気機関士の座席位置に、停止目標を表示すること。
 (2) 電車列車及び気動車列車
   電車又は気動車の前部端りようの位置の電車運転士又は気動車運転士から見やすい位置に停止手信号を現示すること。

(試運転列車等の運転制限)
第19条 駅長は、お召列車の運転に関係のある線路において、お召列車の通過する前3時間内は、次の各号に掲げる列車を運転させてはならない。
 (1) 試運転列車(通常列車に試運転の車両を連結したものを含む。)
 (2) 工事列車
 (3) 損傷車両を連結した列車

(ベル等の使用禁止)
第20条 駅長は、お召列車を停車場から出発させる場合には、列車出発前のベル等を使用してはならない。

(先行列車の車掌乗務及び緩急車の連結)
第21条 お召列車の直前に運転する列車に対しては、緩急車(東海道本線(新幹線)にあっては後部に運転室の設けてある車両)を連結して車掌を乗務させるものとする。

(編成車両の検査担当者)
第22条 お召列車の編成車両の検査及び機関車の通信設備の通話試験等は、お召列車に乗務する客貨車検査掛、電車検査掛又は気動車検査掛が担当し、他の客貨車検査掛、電車検査掛又は気動車検査掛は、その補助をするものとする。

(お召列車に対する出発指示)
第23条 お召列車を停車場から出発させるときは、次の各号に定めるところによるものとする。
 (1) 客車列車
   駅長は、鉄道管理局長の指示を受けた後、機関士又は電気機関士に対して出発合図を行なうこと。
 (2) 電車列車(東海道本線(新幹線)の列車を除く)及び気動車列車
  ア 駅長は、鉄道管理局長の指示を受けた後、車掌に対して出発指示合図を行なうこと。
  イ 車掌は、車内電鈴式により電車運転士又は気動車運転士に対して出発合図を行なうこと。
2 東海道本線(新幹線)においてお召列車を停車場から出発させるときは、次の各号に定める取扱いによるものとする。
 (1) 駅長は、東海道新幹線支社長の指示を受けた後、車掌に対して運転取扱基準規程第372条の規定を準用して出発指示合図を行なうこと。
 (2) 車掌は、車内放送装置(連絡電話)により、電車運転士に対して出発してもよい旨通告すること。

(隣接線路に進入を禁止する列車)
第24条 駅長は、お召列車が停車場に停車している間その隣接線路には、貨物車を連結した列車を停止させ、又は進入させてはならない。

(隣接線路に進入する旅客列車の停止位置)
第25条 駅長は、お召列車が停車場に停車している間その隣接線路に旅客列車を進入させる場合には、その旅客列車を御乗用車の正面をさけて停止させなければならない。

(併行線路を運転する列車の速度調節)
第26条 お召列車を運転する線路と併行する線路と同一方向に運転する列車の機関士(電気機関士、電車運転士及び気動車運転士を含む。以下第28条において同じ)は、お召列車と併列しないように速度を調節して運転しなければならない。

(上方線路の運転禁止)
第27条 鉄道管理局長は、線路が上下に交差する箇所において、お召列車が下方の線路を運転するときは、同時に上方の線路に他の列車又は車両を運転させてはならない。

(行き違う列車の速度制限)
第28条 お召列車を運転する線路に隣接する線路において、お召列車と行き違う列車の機関士は、その速度を1時間25km以下に低下しなければならない。ただし東海道本線(新幹線)を運転する列車の速度は、この限りではない。

(行き違う列車の運転禁止)
第29条 鉄道管理局長は、お召列車を運転する線路において、お召列車と行き違う貨物車(とびらを閉じている有ガイ貨車を除く)を連結した列車に対しては、停車場及び列車を指定して積荷の状態等に異常のないことを確かめさせた後でなければ運転させてはならない。

(直前に運転した列車の途中停止時の処理)
第30条 駅長は、自動閉そく式を施行する区間において、お召列車の直前に運転した列車が途中に停止していることが明らかになった場合には、その列車が前方の停車場を通過したこと又は他の線路に進入したことわ確かめるまでは、お召列車を出発させ、又は通過させてはならない。
2 前項に規定する取扱いは、東海道本線(新幹線)に準用するものとする。

第4節 車両の入換え及び留置

(貫通ブレーキの使用)
第31条 お召列車編成車両の入換えを行なう場合は、貫通ブレーキを使用するものとする。

(車両の入換え制限)
第32条 駅長は、お召列車の運転する線路を支障するおそれのある車両の入換えを行なう場合には、お召列車の通過する時刻の1時間前までに、その入換えを中止しなければならない。ただし、機関車の付替え等のためやむを得ない場合はこの限りでない。

(車両を留置する場合の注意)
第33条 駅長は、お召列車編成車両を留置する場合には、鉄道管理局長の指定する線路を使用し、次の各号に定めるところによるものとする。
 (1) 留置する線路に分岐する転てつ器は、他の線路の方向に開通させておくこと。
 (2) 留置しておく間は、その最前部及び最後部に、移動禁止合図を表示すること。

(留置時の監守)
第34条 鉄道管理局長は、留置してあるお召列車編成車両に対して監守の手配をしなければならない。この場合、必要により、警察官署の助力を求めることができる。

第5節 車両のとびらの取扱い及び車両の消毒

(車両とびら及び踏段の取扱者)
第35条 お召列車編成車両のとびら及び踏段の取扱者は、次の各号に掲げるとおりとする。
 (1) 客車列車
   乗務している客貨車検査掛
 (2) 電車列車
  ア 車両のとびらは、乗務している車掌
  イ 踏段は、鉄道管理局長の指定した者
 (3) 気動車列車
  ア 車両のとびらは、乗務している車掌及び気動車検査掛
  イ 踏段は、鉄道管理局長の指定した者

(車両等の清掃及び消毒)
第36条 お召列車編成車両は、これを使用する場合には、清掃した後、消毒を行なうものとする。
2 前項に規定する清掃及び消毒については、次の各号に定めるところによるものとする。
 (1) 御乗用車は、お召列車に乗務する客貨車検査掛、電車検査掛又は気動車検査掛が行なうこと。
 (2) 御乗用車以外の車両は、所在の機関区、電車区、気動車区、客貨車区、客車区、貨車区、運転所、運転区、管理所及び運輸区において行なう。

第6節 通信

(通信の優先取扱い)
第37条 お召列車の運転に関係ある通信は、電気通信使用基準規定(昭和39年6月電達第11号)第6条及び第14条に規定する至急電話及び至急報に優先して取り扱うものとする。。

(通信の略号)
第38条 お召列車の運転に関係ある電報には、「オメシ」の略号を「ウナ」の頭につけるものとし、通話の申込みを行なうときには、冒頭に「お召」ととなえるものとする。

(通信装置の設備)
第39条 お召列車には、次の各号に掲げる車両間に通信装置を設けるものとする。
 (1) 客車列車
   機関車、前部緩急車及び後部緩急車
 (2) 電車列車及び気動車列車
   運転室及び後部緩急車(東海道本線(新幹線)における電車列車にあたっては、最後部運転室)

(携帯電話機のとう載)
第40条 お召列車には、携帯電話機をとう載するものとする。ただし、沿線電話機の設けてある区間を運転する場合は除く。

第7節 警護

(お召列車の運転の通知)
第41条 鉄道管理局長は、お召列車を運転することが確定したときは、お召列車の運転時刻及びお召列車と他の列車が行き違い、又はこれを待避する予定の区間、停車場、時刻、列車の区分等を、関係のある官公庁に通知しなければならない。

(車両、線路等の検査方)
第42条 鉄道管理局長は、お召列車に使用する車両、お召列車の運転に関係のある線路その他の諸設備について、別に定めてあるものを除き、必要により、その検査方を定めなければならない。

(工事及び作業の終了及び検査)
第43条 鉄道管理局長は、お召列車の運転に関係のある区間において、お召列車の運転に支障を与えるおそれのある工事又は作業を行なう場合には、お召列車を運転する3時間前までに修了させた後、関係の箇所長にその状態を検査させなければならない。
2 東海道新幹線支社長は、お召列車の運転に関係ある区間において、お召列車の運転に支障を与えるおそれのある保守作業を行なう場合は、お召列車を運転する3時間前までに修了させた後、確認車の運転を行なわせなければならない。

(救援の待機)
第44条 鉄道管理局長は、お召列車の運転に関係のある区間において、事故又は災害が発生した場合の応急処置に出動するため、停車場を定めて、これに救援車、トロリー等を配置し、お召列車の通過する時刻の相当前までに、必要な器具及び材料を準備するとともに作業要員を待機させておかなければならない。

(踏切看守人の配置)
第45条 鉄道管理局長は、お召列車を運転する場合には、必要により、踏切保安掛を配置しない踏切に適任者を配置して看守させなければならない。

(警備員の配置)
第46条 鉄道管理局長は、次の各号に掲げる箇所等で、お召列車を運転する区間に関係のある箇所等には、必要により、警備員を配置しなければならない。
 (1) 停車場の乗降場
 (2) 橋りょう、ずい道、踏切及び切りとり箇所
 (3) 給電し、又は配電する変電所、き電区分所、変電区、給電区、き電室及び配電室
 (4) 橋りょう、ずい道等電車線路
 (5) 信号扱所、電話交換機等の信号通信設備の設けてある箇所
2 前項に規定する警備員の配置箇所については、関係の警察官署と協定しなければならない。
3 第1項に規定する警備員には、必要により、携帯電話機を持たせなければならない。

(諸施設の特別巡検)
第47条 鉄道管理局長は、次の各号に掲げる諸施設で、お召列車の運転に関係のある箇所等には、お召列車の通過する時刻の相当前から特別巡検させなければならない。
 (1) 線路
 (2) 主要な電車線路
 (3) 信号設備
 (4) 主要な変電設備
 (5)主要な通信設備

(電力系及びその機器の運用)
第48条 お召列車を運転する区間に関係のある電力系及びその機器の運用については、次の各号に定めるところによるものとする。
 (1) 異電源の受電設備のある変電所及び配電室においては、その設備に対して予備加圧をしておくこと。
 (2) 電力系に支障を与えるおそれのある不安定な負荷に対しては、お召列車を運転する時刻の3時間前までに、その負荷を一時しゃ断しておくこと。
2 鉄道管理局長及び給電管理局長は、発電所、変電所又は配電室の機器について、必要により、その運用方を定めておかなければならない。

(諸設備の処置)
第49条 駅長は、お召列車を運転する線路に接近して設けてある給水用のホース、とい、渡線車、テルハ等の諸設備については、お召列車に支障を与えないように適切な処置をしておかなければならない。

(乗降場にある運搬車類の処置)
第50条 駅長は、停車場においては、お召列車が発着し、又は通過する場合で、その乗降場に手小荷物の運搬車類を留置するときは、一定の場所に留置し、転動防止の処置をしておかなければならない。

第3章 通常列車による取扱い

(規定の準用)
第51条 天皇陛下又は皇后陛下が通常列車に御乗車の場合の取扱方については、前章の規定(第9条、第10条、第21条から第23条まで、第31条、第33条、第34条、第39条及び第40条を除く)を準用するほか、この章の定めるところによるものとする。

(御乗用車等の増結)
第52条 天皇陛下又は皇后陛下が通常列車に御乗車の場合は、御乗用車及び必要な旅客車を増結するものとする。

(御乗用車に対する出発指示)
第53条 天皇陛下又は皇后陛下の御乗用列車を御乗車された停車場から出発させるときは、次の各号に定めるところによるものとする。
 (1) 客車列車
   駅長は、鉄道管理局長(鉄道管理局長が乗務しない場合は運転部長又は運輸部長。以下第2号アにおいて同じ)の指示を受けた後、機関士又は電気機関士に対して出発合図を行なうこと。
 (2) 電車列車(東海道本線(新幹線)の列車を除く)及び気動車列車
  ア 駅長は、鉄道管理局長の指示を受けた後、車掌に対して出発指示合図を行なうこと。
  イ 車掌は、車内電鈴式により電車運転士又は気動車運転士に対して出発合図を行なうこと。
2 東海道本線(新幹線)において天皇陛下又は皇后陛下の御乗用列車を御乗車された停車場から出発させるときは、次の各号に定める取扱いによるものとする。
 (1) 駅長は、東海道新幹線支社長(東海道新幹線支社長が乗務しない場合は運転車両部長)の指示を受けた後、車掌に対して、運転取扱基準規定第372条の規定を準用して出発指示合図を行なうこと。
 (2) 車掌は、車内放送装置(連絡電話)により、電車運転士に対して、出発してもよい旨通告すること。

(御乗用列車の乗務職員)
第54条 御乗用列車には、その列車の乗務員のほか、別表第3に定める職員を乗車させるものとし、その乗務位置は、そのつど指示する。

第4章 皇太子殿下及び皇太子妃殿下が御乗車の場合の取扱い

第1節 臨時列車による取扱い

(規定の準用)
第55条 皇太子殿下又は皇太子妃殿下が御乗車される御乗用臨時列車の取扱いについては、第2章の規定を準用するものとする。ただし、電車列車又は気動車列車に御乗車される場合の乗務職員については、別表第4に定めるとおりとする。

第2節 通常列車による取扱い

(通常列車による取扱い)
第56条 皇太子殿下又は皇太子妃殿下が通常列車に御乗車の場合の取扱方については、この節の定めるところによる。

(御乗用車等の増結)
第57条 皇太子殿下又は皇太子妃殿下が通常列車に御乗車の場合は、御乗用車及び必要な旅客車を増結するものとする。

(隣接線路に進入する旅客列車の停止位置)
第58条 駅長は、御乗車列車が停止する停車場の隣接線路で行き違い、又は待避する列車の旅客車(回送のものを除く)については、つとめて御乗用車から隔てて停止させるものとする。

(御乗用列車に対する出発指示)
第59条 皇太子殿下又は皇太子妃殿下の御乗用列車を御乗車された停車場から出発させるときの取扱いは、第53条の規定を準用するものとする。

(御乗用列車の乗務職員)
第60条 御乗用列車に乗務する職員は、その列車の乗務員のほか、別表第5に定める職員を乗務させるものとし、その乗務位置は、そのつど指示する。

附則

1 この達は、別に定める日から施行する。
2 この達は、施行の日から3年間有効とする。

新幹線の御召列車

 1964年(昭和39年)10月1日、国鉄本社で挙行された新幹線(東海道新幹線)の開業式に昭和天皇・香淳皇后が出席したが、開業日に初めての新幹線御召列車は運行されなかった。

 初めて新幹線の御召列車が運行されたのは、開業翌年の1965年(昭和40年)5月7日、鳥取県大山町で開催される第16回国土緑化大会(全国植樹祭)に出席する昭和天皇・香淳皇后は、東京9時30分発の御召列車に乗車した。新幹線には御召列車用の御料車はなく、一等車(グリーン車)に乗車し、浜名湖から蒲郡附近までの約15分間、運転席に出向き、新幹線支社長の説明を受けた。初めての新幹線御召列車は新大阪に13時30分に到着し、昭和天皇・香淳皇后は御召列車に乗り換えて岡山に赴いた。なお、東京を定刻9時30分に発車する〔こだま〕は5分遅れで運行した。

 第16回全国緑化大会出席の帰路も、京都から東京まで、昭和天皇・香淳皇后が新幹線に乗車した。

 その後、御召列車として新幹線を運行することが少なくなかったが、新幹線に専用の御料車はなく、他の営業列車と区別がつかないため、警備上の理由などから、先頭車輌に識別帯がついた。この識別帯は100系電車以降の新幹線車輌ではつかなくなった。これは、無線が普及し警備上の観点から識別する必要がなくなったからだという。

 皇族で初めて新幹線に乗車したのは、新幹線開業の前日に結婚式を挙げた常陸宮正仁親王夫妻で、伊勢神宮や神武天皇陵に報告するため、10月6日に新幹線〔ひかり6号〕で名古屋に向かったのが最初の新幹線乗車だった。

国鉄・JR以外の御召列車

 御召列車は、JR(旧国鉄)線以外のいわゆる「民鉄」(私鉄)でも運行される。運行方法は2つあり、JRと直通と直通していればそのまま乗り入れるケース、もう1つは民鉄側が貴賓車を用意する、あるいは特急車輌を改造して御召列車として運行するケースがある。

 前者のケースは、伊豆急行や島原鉄道など、通常の営業列車でJR線と相互乗り入れ運転している線区において、御召列車がそのまま乗り入れる。

 後者のケース、民鉄側が貴賓車を用意するケースは、第二次世界大戦前の大阪電気軌道(現在の近畿日本鉄道)のサ2600、京阪神急行電鉄(現在の阪急電鉄)のフキ500、名古屋鉄道のトク1形SC3、東武鉄道のトク1があった。第二次世界大戦後は、特急車輌を団体貸切列車のように臨時運行して御召列車とするケースがほとんどで、JRのように国旗を先頭部に掲揚しないことが多く、一般の特急列車と簡単に区別がつかないケースが多い。

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