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御料車

「自動車」の御料車

 自動車においても「御料車」が存在する。

 それまでの馬車に代わり、1912年(大正元年)に英国から輸入したデイムラー(ダイムラー)・ランドレーが初代の御料車である。

 現在は、2006年(平成18年)に導入されたトヨタ・センチュリーロイヤルが7代目の御料車となっている。ちなみに、価格は1台5,250万円。御料車専用車種であり一般向けの販売はない。

 なお、御料車には通常のナンバープレートがつかず、「皇」と数字の標識がつけられる。公務走行中にはいわゆる「菊の御紋」が取り付けられる。

 「御料車」とは、皇族が乗る車、車輌のことである。

 御料車は自動車、鉄道車輌の双方があり、自動車は宮内庁が所有しているものの、鉄道車輌は製造した日本国有鉄道(国鉄)を承継したJR東日本が所有している。

 鉄道車輌の「御料車」には、天皇皇后両陛下、皇太后陛下が公式に乗られる専用車輌、天皇皇后両陛下や皇太后陛下が非公式(私的)に、あるいは皇族が外国王室や国賓が乗られる貴賓車輌、宮中三殿の賢所に祀られている神鏡を移送する賢所乗御車かしこどころじょうぎょしゃ、皇室用の霊柩車にあたる轜車じしゃがある。

 御料車には、「サロ」や「マイテ」のような鉄道車輌の形式称号は付されず、「第1号」のように号数で称される。

 なお、航空機では、専用の「御料機」は存在しないが、外国に公式訪問される天皇皇后両陛下が政府専用機(ボーイング747-400)に搭乗されると「御料機」や「御召機」と呼ばれることがある。

御料車・賢所乗御車

番号 用途 形式 製造年 全長 製造費 保存場所 指定
明治 第1号(初代) 天皇御乗用 木製2軸車 1876年 7.34 12,000 鉄道博物館 重文
鉄道
第2号(初代) 天皇御乗用 木製2軸車 1891年 8.19 不詳 鉄道博物館 鉄道
第3号(初代)
のち第13号
天皇御乗用 木製2軸
ボギー車
1898年 16.13 33,294 東京総車セ
第4号 皇太子・皇太子妃御乗用 木製2軸
ボギー車
1900年 16.13 不詳 (解体)
第5号 皇后御乗用 木製2軸
ボギー車
1902年 16.13 26,464 博物館明治村 鉄道
第6号 天皇御乗用 木製3軸
ボギー車
1910年 20.73 64,253 博物館明治村 鉄道
大正 第7号 天皇・皇后御乗用 木製3軸
ボギー車
1914年 20.68 61,525 鉄道博物館 鉄道
第9号 食堂 木製3軸
ボギー車
1914年 19.99 46,908 鉄道博物館 鉄道
賢所乗御車 賢所移送 木製3軸
ボギー車
1915年 19.99 27,106 東京総車セ
第8号 皇后御乗用 木製3軸
ボギー車
1916年 20.68 69,309 鉄道博物館(一部)
第10号 国賓(展望) 木製3軸
ボギー車
1922年 20.00 132,994 鉄道博物館 鉄道
第11号 国賓(食堂) 木製3軸
ボギー車
1922年 20.00 124,634 (解体)
第12号 摂政宮御乗用 木製3軸
ボギー車
1924年 20.06 179,031 鉄道博物館
昭和 軽便御料車 天皇御乗用 1930年 7.17 不詳 (解体)
第1号(二代)
のち第3号(三代)
天皇・皇后御乗用 鋼製3軸
ボギー車
1932年 20.00 147,774 東京総車セ
第2号(二代) 皇后御乗用 鋼製3軸
ボギー車
1933年 20.00 173,298 東京総車セ
第3号(二代) 皇太后御乗用 鋼製3軸
ボギー車
1936年 20.00 149,971 東京総車セ
第14号 皇太子御乗用・国賓 鋼製3軸
ボギー車
1938年 20.00 不詳 東京総車セ
第1号(三代) 天皇・皇后御乗用 鋼製2軸
ボギー車
1960年 20.00 58,865,102 東京総車セ
賢所乗御車

 1915年(大正4年)11月、大正天皇の即位礼が京都で挙行されることとなった。1868年(明治元年)・1869年に明治天皇が東京(江戸)に行幸し、事実上東京に首都が移った(東京奠都てんとともいう)。大日本帝國憲法下の皇室典範(1889年勅定)では第11条において「即位ノ礼及大嘗祭ハ京都ニ於テ之ヲ行フ」と定められていた。明治天皇の崩御により即位した大正天皇の即位礼は、この典範の定めにより、京都で挙行されることになった。そのため、即位礼に必要な宮中三殿の賢所に祀られている神鏡を移送する必要が生じ、そのために製造された車輌が「賢所乗御車」である。

 賢所乗御車は、賢所奉安室と掌典しょうてん室が設けられ、鉄道院(国鉄)側が宮中の慣習からの神鏡の寸法計測を宮内省に拒まれつつも、明治の東京奠都に際し、賢所の神鏡を御羽車で移送したした時の記録などを参考に製造された。1928年(昭和3年)の昭和天皇の即位礼でも賢所乗御車によって、賢所の神鏡は京都に移送された。なお、今上天皇のの即位礼は東京で挙行された(日本国憲法による新しい皇室典範には第24条で「皇位の継承があつたときは、 即位の礼を行う」と即位礼の場所を法定していない)ため、賢所の神鏡を移送する必要はなくなった。

轜車じしゃ

 「轜車」とは、天皇、皇后、皇太后の霊柩(棺)を輸送する車のことである。

 鉄道車輌として初めて轜車が製造されたのは、1897年(明治30年)11月に崩御した英照えいしょう皇太后(孝明こうめい天皇の后)の大喪の時である。大喪は京都の天皇家の菩提寺泉涌寺せんにゅうじで挙行され、後月輪東北陵のちのつきのわのとうほくのみささぎに埋葬された。この移動手段として鉄道が使われたが、轜車に関する記録は乏しく、どのような車輌だったかは詳らかではない。

 1912年(明治45年)7月に明治天皇が崩御した際には、東京・青山の陸軍練兵場(現在の神宮外苑)で大喪が挙行され、霊柩を京都へ運び、伏見桃山御陵ふしみももやまのみささぎに埋葬される時、東京から東海道本線経由で京都まで轜車を連結した特別列車が運行された。また、1914年(大正3年)4月に崩御した昭憲しょうけん皇太后(明治天皇の后)の大喪の時にも轜車を連結した特別列車が京都まで運行された(霊柩は明治天皇の陵である伏見桃山御陵の東隣の伏見桃山東陵ふしみももやまのひがしのみささぎに埋葬された)。明治天皇・昭憲皇太后の大喪に使われた轜車はのちに病客車(負傷した軍人等を輸送するための車輌)に改造された。

 1926年(大正15年)12月、療養中の大正天皇が神奈川県の葉山御用邸で崩御し、新宿御苑で大喪が挙行されることとなった。葉山御用邸から東京の宮城(皇居)に霊柩を運び、新宿御苑から八王子市の多摩陵たまのみささぎまで移送するのに轜車を連結した特別列車が運行された(これを大喪列車とよぶこともあった)。

 1951年(昭和26年)5月に崩御した貞明ていめい皇后(大正天皇の后)、1989年(昭和64年)1月に崩御した昭和天皇、2000年(平成12年)6月に崩御した香淳こうじゅん皇后(昭和天皇の后)の大喪では、八王子市の多摩東陵たまのひがしのみささぎ武蔵野陵むさしののみささぎ武蔵野東陵むさしののひがしのみささぎまでの霊柩移送には、自動車の轜車が用いられたため、鉄道車輌の轜車は、英照皇太后、明治天皇・昭憲皇太后、大正天皇の大喪に用いられた3輌のみとなった。

1号編成の供奉ぐぶ

番号 用途 形式 製造年 保存場所
330 旧一等客室(随行員乗車)・供進所 鋼製2軸
ボギー車
1931年 東京総車セ
340 旧一等客室(随行員乗車) 鋼製2軸
ボギー車
1931年 東京総車セ
460 発電室・車掌室 鋼製2軸
ボギー車
1931年 東京総車セ
461 旧一等・二等客室(随行員乗車)・荷物室 鋼製2軸
ボギー車
1931年 東京総車セ

貴賓車輌・特別車輌

 1960年(昭和35年)に、皇族の小旅行、外国賓客の旅行用に製造されたのが、貴賓車輌の「クロ157-1」が製造された。クロ157-1は、外国品客の旅行先に人気が高かった日光への運行を考慮し、準急〔日光〕向けに製造された157系電車の一員となっている。

 車体中央に貴賓室(天皇皇后両陛下、皇太后陛下御乗用の専用ではないためこの呼称が用いられる)があり、大きな窓と4枚折扉が特徴的である。基本的に、クモハ157-1+モハ156-1との3輌編成によって運行され、クロ157-1が編成の最後部となるように運行されていたが、電気系統の故障からモハ156-2、クモハ157-2を増結した5輌編成が運行の基本編成となった。天皇皇后両陛下が乗車される時は、先頭部分に日の丸(国旗)の掲出はないものの、クロ157-1の車体には「菊の御紋章」が掲出される。

 外国賓客の旅行用も目的だったが、外国賓客の利用は少なく、専ら昭和天皇・香淳皇后が葉山や那須の御用邸に静養に出かけられる時や当時の皇太子ご一家や常陸宮ご夫妻のお出かけにも運行されることが多かった。1980年(昭和55年)に157系電車が全廃されるものの、クロ157-1は183系1000番台電車に連結されるようになるものの、1985年には特急〔踊り子〕向けの185系電車に連結されるようになり、車体塗色がそれまでのいわゆる「特急色」(新製当時は157系電車の塗色に準じていた)から、アイボリーに緑のラインに改められた。

 現在でもクロ157-1はJR東日本田町車両センター(以前の田町電車区)に在籍し、御料車と同様に東京総合車両センターに留め置かれている。しかし、1993年(平成5年)以降、運行されていない。

 1号編成やクロ157-1を国鉄から承継し保有するJR東日本は、2007年(平成19年)7月、1号編成が車輌製造からおよそ半世紀が経たことから、これらの代替となる「特別車両」を製造した。特別車輌は、E655系電車「ハイグレード車両」5輌と連結され、天皇皇后両陛下、皇族の行幸や外国賓客の旅行に供される。

>>> [E655系電車]
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