JôJô Tour 2005
岡山駅のみどりの窓口では「駅長よりお知らせ」として、山陽新幹線の遅れを案内していた。このような案内は、新幹線駅を中心によくみられるようになった。
広島始発の〔のぞみ〕は5分程度、博多始発の〔のぞみ〕は30〜40分程度の遅れが生じていた。
きっぷは「ひかり」、案内表示は「ひかりレールスター」。JR西日本がレールスターを売り込みたいのは当然だが、案内が複雑になっては意味がない。
ヘッドライトを輝かせ、「ひかりレールスター」の〔ひかり375号〕が岡山駅に到着した。
山陽新幹線区間の新大阪−博多間にだけ運転される「ひかりレールスター」の700系7000番台電車のロゴ
広島に到着した〔ひかり375号〕。ここまでは定刻だが、この先で雪害による遅れが生じた。
この「ひかり号新形車両」は、何を指し示すのだろうか……? 「ニューひかり」として登場した100系電車? それとも「ひかりレールスター」の700系7000番台電車?
375A 〔ひかり375号〕
0.0
岡 山
18:43発
56.7
福 山
19:00発
144.9
広 島
19:24着
上りはダイヤ混乱状態
岡山駅の改札口を出て、みどりの窓口に向かったが、みどりの窓口には「岡山駅長よりお知らせ」と題する案内表示がプラズマディスプレイで表示されていた。いわば、マイクロソフトのパワーポイント でプレゼンテーションをしていると考えれば、何ら特別な装置ではなく、今後も増備してもらいたいし、積極的な情報提供を望みたい。
ところで、雪害で遅れている山陽新幹線は、岡山発の下りがほぼ定刻発車、上りが博多始発が30〜40分程度、広島始発が5〜10分程度の遅れ、岡山始発はほぼ定刻発車という状況で、雪が降り続いている山口・広島を通ってくる上りはダイヤが混乱しているようだ。
当初から「ひかりレールスター」に乗車する計画だったので、この後の〔ひかり375号〕に乗車変更を申し込んだ。みどりの窓口で応対してもらった駅員によれば、下りはほぼ定刻通りに運行されていて、広島以西で速度制限からダイヤに遅れが出ているとのことだった。
〔ひかり375号〕まで20分ほど時間があるので、外の様子を見に、東口である新幹線口から出てみた。雪は降っていないものの、北風が肌を刺すように冷たい。とても駅前の街並みを楽しむ余裕はない。取って返すように駅構内に戻った。
時間にはやや余裕があるが、新幹線改札口に向かった。JR西日本の山陽新幹線区間では自動改札は導入されておらず、有人改札となっている。新幹線でも自動改札が慣れた者にとっては、意外だとやや驚く。いずれは自動改札化されるのは容易に想像できる。今や、改札は非接触型ICカードにも対応できるのだから、新幹線はきっぷレス(チケットレス)の時代がやってくる。そのチケットレスはICカードだけでなく、携帯電話でチケットレスという時代だ。蒸気機関車(SL)が電車や気動車に取って代わったように、有人改札もICカード・携帯電話対応の自動改札に取って代わられるのは時間の問題なのだろう。
さて、改札内のみやげ物屋などを眺めながら、案内表示に導かれるまま、エスカレーターで3階の新幹線ホーム、2番線ホームに向かった。
遅れが生じている上りホームへ向かう利用客は、どの列車が一番最初に発車していくのか、どれに乗れば目的地の駅に到着するのか、案内表示に凝視しているようだ。
18時42分、新大阪方向から700系7000番台電車8輌編成の〔ひかり375号〕が到着した。車内から降りた乗客は、階段やエスカレーターに向かったり、1番線ホームに停車している〔こだま677号〕へ向かっていた。降車が終わり、ホームに並んでいた乗客が乗り込んだ。18時43分、定刻どおり〔ひかり375号〕は岡山駅を発った。VVVF制御のモーター音も比較的静かで、指定された座席に腰をかけていたが、発車したかよくわからないほど、なめらかに動き出した。
グリーン車並みの「サルーンシート」
岡山発車後、程なくして、「いい日旅立ち・西へ」のメロディーとともに「きょうもJR西日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、ひかりレールスター、博多行です。……」と車内放送が流れた。車掌による肉声の案内放送では「ひかり375号、レールスター、博多行です」と、あくまでも〔ひかり375号〕が正称で、「レールスター」は副称のような扱い方だ。客室ドア上に設置されているLED案内表示では「ひかり375号 Rail
Star 博多行きです」と表示されている。
「ひかりレールスター」の700系7000番台電車は、東海道新幹線でも運転されている〔のぞみ〕の700系電車と同系列で、営業最高速度は285km/hを誇る。確かに500系電車の営業最高速度300km/hよりは抑えられているが、この「ひかりレールスター」用の700系7000番台電車は大量輸送力よりも輸送快適性を追求した車輌で、指定席車は2+2の4列シートと、グリーン車並みになっている。なお、自由席車は、ほとんどの他の新幹線車輌の普通車と同じように2+3の5列シートとなっている。そのため、グリーン車はない。
実際にサルーンシートに腰掛けてみると、座席にすっぽりと包まれているような感じがする。見知らぬ男性同士でもヒジが当たらないほどゆったりしている。わざわざ「ひかりレールスター」を指名買い≠オて乗車する利用客もいるそうだが、指名買い≠オたい気持ちは十分にわかる。通常の指定席料金で利用できるのだから。500系電車や700系電車の〔のぞみ〕は確かに速いが、快適性なら「ひかりレールスター」に軍配は上がる。
さらに、「ひかりレールスター」にはコンパートメント(個室)が4室もあり、各指定席車の最前列はオフィスシートとして電源と大型テーブルがついている。さらに、4号車はサイレンスカーで車内放送はカットされ、車内販売のワゴンも無言で通り過ぎるという。もちろん、車内販売も購入可能だが。逆に、客室内では乗客にも静粛性が求められる。ただ、この〔ひかり375号〕のようにこの先の広島以西で雪害による遅れ情報に関する車内放送は、4号車のサイレンスカーでも放送直後にことわって放送している。
ちなみに、雪害による遅れの情報をまとめると、広島−小倉間で徐行運転をしていて、新山口に20分程度、小倉と博多には30分程度遅れて到着するので、乗り継ぎ列車には注意されたい旨の放送だった。
「ひかり Rail Star」に見るJR西日本の苦悩と挑戦
右手にライトアップされた福山城が見え、ゆっくりと減速を始め、福山に停車した。ここでは、〔のぞみ〕の追い抜きなどはなく、また6号車でも大きな動きもなく、福山を発車した。「ひかりレールスター」の快適な旅もあとわずか20分ほどである。
ところで、どうして、JR西日本は「ひかりレールスター」のような大量輸送力よりも輸送快適性を追求した車輌を導入したのだろうか。
JR西日本が管轄する山陽新幹線では、大阪−福岡間は航空機との競争では不利で、大阪・福岡と岡山や広島、小倉などを結ぶ主要都市間の速達列車に力を注ぐことにしたのだが、JR東海の700系電車のように16輌編成で一気に1,000名以上の乗客を輸送するだけの輸送需要もない。逆にそのような需要はJR東海から乗り入れてくる700系電車に任せればよく、「ウエストひかり」と呼ばれる0系電車を改造した車輌を導入して、ゆったりとした快適性を重視した車輌を導入した。
この「ウエストひかり」の後継車輌が700系7000番台電車の「ひかりレールスター」といえる。多少速さを犠牲にしてもとことん快適性に満足してもらいたい。そのような方針がふんだんに盛り込まれている。前述のようなコンパーメントやサイレンスカー、さらにはサルーンシートは、JR東海ではとてもマネできないサービスだろう(これは、JR東海が快適性を重視していないわけではなく、それよりも大量の輸送需要をどう捌くかに視点が置かれている)。しかし、逆に言えば、山陽新幹線では東海道新幹線のような大きな輸送需要は見込めないことも同時に裏付けている。このような快適な車輌ならば16輌編成で運転してもいいはずである。それよりも8輌編成として山陽新幹線内の〔ひかり〕を「ひかりレールスター」に置き換えた方が賢明な経営判断といえる。
しかし、国鉄時代にはこのような施策は考えられず、JR西日本が顧客重視の志向を前面に出したからで、だからこそ、東海道・山陽新幹線では伝統だった白地に青帯の車体カラーさえも「捨てた」。
まさに、JR西日本の「線路の星(Rail Star)」となるのか。今後の活躍が期待されている車輌である。JR西日本の挑戦はまだまだ続くようだ。
19時24分、〔ひかり375号〕は広島駅11番線ホームに到着した。
岡山駅にて……「コメット・紙テープの使用及び胴上げは……」?
岡山駅で〔ひかり375号〕を待っていると、ホームの柱に゜ご案内」と題する看板が目に入った。
読んでみると、「危険ですからコメット・紙テープの使用及び胴上げは固くおことわりいたします」とある。
コメット???……なんだ?
コメットとは、いわゆるクラッカーのことで、新婚旅行出発の時にクラッカーを鳴らして紙テープを投げ、新郎を胴上げしないでくださいということなのだろう。確かにクラッカーや紙テープが架線にからめばそれだけで停電して新幹線は止まってしまう。披露宴の寄った勢いでついついと思うが、それにしてもまだ新郎を胴上げしたり、クラッカーを鳴らしたり、紙テープを投げたりするのだろうか。てっきり、「昭和晩期」のブームで終わったと思っていたが……